マイクロバブルとは(中級)

命名の経緯
マイクロバブルは1992年に広島県の牡蠣が赤潮により壊滅の危機に陥った時に、当時の徳山高等専門学校の大成教授が海水中で微細気泡を発生させ、牡蠣を危機から救ったことにより注目を浴びた。
この時に、大成教授がこの微細気泡をマイクロバブルと名付けたことからマイクロバブルが日本発の技術として本格的な研究が始まったといわれています。
これにより、牡蠣はよみがえり、味が良くなると同時に、成長も早くなったことが注目され、その後、北海道のホタテや伊勢の真珠貝でも成果が出て、新聞やNHKニュースなどでも取り上げられた。
その後、2005年の愛知万博で、海水に棲む鯛と、淡水に棲む鯉を同じ水槽で1か月以上飼育する展示を行い、さらに注目を浴びた。
微細な泡(マイクロバブル)の効果は、もっと昔から船のスクリューや水車の羽根が傷むことや、ポンプの羽根やパイプのクランク部分の損耗などから、回転時や衝撃時に発生するミクロの泡に、何らかの作用が発生していることは知られていた。
(エロージョン現象といわれているが、マイクロバブルの影響か、ナノバブルの影響かは未解明。)
命名による混乱
ただし、この時の微細気泡はその上昇速度から50~100ミクロン前後の泡だと考えられるが、この泡を特定してマイクロバブルとしたことで、現在も多少の混乱が生じている。
というのは、1~999ミクロンの泡は全て定量的にはマイクロサイズの泡であり、マイクロバブルといっても間違いではない。しかし、この時に効果を発揮したのは50~100ミクロン前後の泡であり、この50~100ミクロンの泡をマイクロバブルと命名したことで、100ミクロンより大きな泡しか発生できないマイクロバブル発生器も牡蠣を赤潮から救ったような効果があると混同されてしまう混乱が生じている。
ただし、100ミクロン以上の大きなサイズのマイクロバブルしか発生できない機器は悪いのかというと、一概にそうとも言えない。ブロワーと同じようにDO値を上げることはできるかもしれない。
新しい名称『ファインバブル』
また、最近になり、大手企業が集まり、ファインバブル産業会が発足し、経産省の支援を受けて日本発の技術としてISO化を推進している。
ISOでは100ミクロン以下のバブルをマイクロバブルもナノバブルも含めて、『ファインバブル』という定性的な用語で定義することにしている。
ナノバブルについて
マイクロバブルに言及したなら、必ずナノバブルについても触れる必要があります。
液中で発生したマイクロバブルの内、約50μより大きなマイクロバブルは数分で消滅してしまいますが、
一方で約50μ以下のマイクロバブルは水圧によってナノバブルへと縮小していきます。
ナノバブルはマイクロバブルよりもさらに小さな泡であり、マイクロバブルよりもいろいろな作用を及ぼすことが考えられています。
(現時点ではマイクロバブルもナノバブルも解明できていない部分が多く、その性質やそれがもたらす効果は不透明であり、詳細な説明はできない。)
当社の装置で発生させたものを島津製作所のSALD-7500nanoで測定した結果では、マイクロバブルが1ml中に約3,000個発生するのが確認され、さらに発生から5分後に測定すると、ナノバブルが1ml中に約1億5千万個発生しているのが確認できます。ナノバブルはさらに3時間後、5日間後に測定しても1億個強の数値が確認され、滞留していることが確認されています。
ナノバブルは特殊な性質を持っており、液中のナノバブルは徐々に圧壊して消滅していくものと、長時間そのまま液中に滞留し続けるという2つの性質を持っています。
『ウルトラファインバブル』
上にも述べましたが、現在、日本が主導してISO化を推進していますが、ISOでは『ファインバブル』と同じようにナノバブルの中でも、長時間液中に滞留する性質を備えたナノバブルを『ウルトラファインバブル』と定性的に表現しています。
『マイクロファインバブル』
そこで、私としてはファインバブルの中でも、50μ以下の特殊な性質を持っているマイクロバブルを定性的に表現する必要があると考え、それを『マイクロファインバブル』と呼ぶことにより、マイクロバブル、ナノバブル、ファインバブル、ウルトラファインバブルの関係性がわかりやすくなってくるのではないかと考えています。
定量的表現と定性的表現
以上のように、科学的に未解明な部分の多いマイクロバブルについては定量的と定性的の両方の表現を使って議論していくのが当面は良いと考えています。
(将来的には用語の定義を曖昧にしたままだと禍根を残すことになる。)
マイクロバブルの名称概念図
そこで以下のように名称を定義づけてみました。参考にしていただければと思っています。
- マイクロバブルとは定量的に表現すれば1~999μのミクロン(マイクロ)サイズの泡のことです。
- 液中で発生したマイクロバブルの内、約50μより大きなマイクロバブルは数分で消滅してしまいます。
- 一方、約50μ以下のマイクロバブルは水圧によってナノバブルへと縮小していきます。
- 当社の装置でもマイクロバブル(1ml中約3,000個)と同時にナノバブル(1ml中に約1.5億個)が発生しているのを確認しています。
- ナノバブルは特殊な性質を持っており、液中のナノバブルは徐々に圧壊して消滅していくものと、長時間そのまま液中に滞留し続けるもの、という2つの性質を持っています。
- 現在、日本が主導してISO化を推進していますが、ISOではこの不思議な泡を定量的表現ではなく、定性的表現を使用して、特異な性質を保有する100μ以下の泡を『ファインバブル』として表現しています。
- 科学的には定量的表現にするべきですが、科学的に未解明な性質を表すには定性的表現も必要かもしれません。
- そして、長時間液中に滞留する性質を備えたナノバブルも『ウルトラファインバブル』と定性的に表現しています。
- そこで、当社でも今まで『マイクロバブル』と呼んでいた50μ以下の特殊な性質を持っているファインバブルを定性的に表現する必要があると考え、それを『マイクロファインバブル』と呼ぶのが良いと考えています。
- 以上のように、科学的に未解明な部分の多いマイクロサイズとナノサイズのバブルについては定量的と定性的の両方の表現を使って議論していくのが当面は良いと考えています。
日本の状況
マイクロバブルの発生方式による分類
発 生 方 式 | 備 考 | 評 価 |
---|---|---|
加圧溶解方式 | 加圧ポンプと溶解タンクが必要。 大型化製品としては使える。 |
空気注入が必要。 高濃度も可能。 |
高速旋回流方式 | 高速で水と空気を混ぜる必要がある。 大型化製品としては使える。 |
空気注入が必要。 高濃度も可能。 |
高速剪断方式 | 水圧の高い水流が必要。 大型化すると、高速剪断での耐久性が問題。 |
空気注入が必要。 高濃度も可能。 |
超音波方式 | 超音波発生装置が必要。 小型では低濃度。 |
電気設備。 低濃度。 |
浸透膜方式 | 膜の隙間よりも泡のサイズが大きくなる。 浸透させるための圧力が必要。 |
不安定。 |
SPG膜方式 | 熱帯魚の水槽用の延長線上。 | 不安定。低濃度。 |
エジェクター方式 | エジェクターだけではマイクロバブル化 しない。空気を加える必要がある。 |
ナノにはならない不安。 |
フリップフロップ方式 | 特殊形状と高圧水流又は回転装置。 製造技術に工夫が必要。 |
高圧水流なら高濃度も。 |
キャビテーション方式 | 特殊形状と水道圧0.12MPa以上 実用化しているのはmicro-bub1社のみ。 |
空気注入も可能。 中濃度~高濃度まで。 |
- 加圧溶解方式
-
【備考】
加圧ポンプと溶解タンクが必要。
大型化製品としては使える。
【評価】空気注入が必要。
高濃度も可能。
- 高速旋回流方式
-
【備考】
高速で水と空気を混ぜる必要がある。
大型化製品としては使える。
【評価】空気注入が必要。
高濃度も可能。
- 高速剪断方式
-
【備考】
水圧の高い水流が必要。
大型化すると、高速剪断での耐久性が問題。
【評価】空気注入が必要。
高濃度も可能。
- 超音波方式
-
【備考】
超音波発生装置が必要。
小型では低濃度。
【評価】電気設備。
低濃度。
- 浸透膜方式
-
【備考】
膜の隙間よりも泡のサイズが大きくなる。
浸透させるための圧力が必要。
【評価】不安定。
- SPG膜方式
-
【備考】
熱帯魚の水槽用の延長線上。
【評価】不安定。低濃度。
- エジェクター方式
-
【備考】
エジェクターだけではマイクロバブル化しない。
空気を加える必要がある。
【評価】ナノにはならない不安。
- フリップフロップ方式
-
【備考】
特殊形状と高圧水流又は回転装置。
製造技術に工夫が必要。
【評価】高圧水流なら高濃度も。
- キャビテーション方式
-
【備考】
特殊形状と水道圧0.12MPa以上
実用化しているのはmicro-bub1社のみ。
【評価】空気注入も可能。
中濃度~高濃度まで。
マイクロバブルの用途
- 洗浄
-
入浴 人、ペット、介護 シャワー 人、ペット、介護 洗濯機 衣類、洗濯槽の裏側 脱脂 鋳造、機械加工 塩害 コンクリート擁壁の洗浄 ウォッシュラック ヘリコプター、航空機 野菜の洗浄 残留薬剤の減少、排水の浄化 オゾン水洗浄 残留しない、オゾン水で安全性向上 スケールの除去 クーリングタワー スケールの低減 建物給排水管の保全
- 熱交換
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入浴 保温効果 切削・穿孔 切子が焼けない、刃が長持ち 石の切断 刃が長持ち、節水
- 農林
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水耕栽培 植物栽培はナノバブルによって生育環境が良くなりすぎても、商品としては良くない結果となる。篤農家の視点が不可欠。 露地栽培 イチゴの栽培 生花の育成 根菜類の洗浄 生姜や大根、ニンジンなど
- 水産
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エビの養殖 ベトナムやタイでの実験 ウナギの養殖 稚魚の致死率低減 魚の養殖 成長促進 藻類の養殖 魚の輸送 DOの増加またはCO2での休眠化 生簀の鮮度保持 DO増加 金魚の養殖 アンモニアの低減 貝類の鮮度保持 溶けにくい氷 ナノバブル氷や窒素氷
- 環境
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河川の浄化 ナノバブルによる浄化 河川のDO向上 空気の積極的混入 港湾の浄化 池の浄化 水道水の洗浄 残留しないオゾン水の利用 摩擦抵抗現象 切削、穿孔、船舶の推進抵抗削減 エンジン燃料 ナノバブル化による燃費向上
- 医療
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洗浄、殺菌 オゾンマイクロファインバブル水